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アルギニンとは?

2024年03月18日 2024年03月18日

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アルギニンはスポーツ飲料や栄養食品、サプリメントなどによく配合されています。とても身近な成分ではありますが、どのような効果や効能をもつのかご存知ですか?

アルギニンは、運動をする方はもちろん、免疫機能が気になる方や活力をアップしたい方におすすめの成分です。このほか、美肌作りにも役立つことが分かっています。

今回は、論文のデータをもとにアルギニンの効果や効能について詳しく見ていきましょう。アルギニンを多く含む食材や一日の目安摂取量などについても紹介しています。

アルギニンとは?

アルギニンとは、非必須アミノ酸の一つです。アミノ酸には全部で20種類あり、このうち9種類が必須アミノ酸、残り11種類が非必須アミノ酸と呼ばれています。非必須アミノ酸とは、糖質や脂質を原料にして体内で作り出すことのできるアミノ酸のことです。つまり、必ずしも外から摂取しなければならないわけではありません。

非必須アミノ酸には、アルギニンのほかにチロシンやシステイン、アスパラギン酸やグルタミン酸、アラニンなどがあります。非必須アミノ酸とは違い、必須アミノ酸は食事から摂らなければなりません。ただし、一般的な食事をしていれば不足することはないと言われています。

一方でアルギニンは、非必須アミノ酸ではあるものの、体内での生成能力はそこまで高くありません。そのため、食事やサプリメントなどからしっかりと摂取することが大切です。

アルギニンが不足すると、体の成長が阻害されたり血管の弾力性が低くなったりすることがあります。しかし、過剰に摂取すると胃腸に負担がかかることがあるため、摂取量には気をつけましょう。

アルギニンは、界面活性剤としても使われている成分です。水と油を混ざりやすくする働きがあるため、シャンプーに配合されることもあります。界面活性剤の中には洗浄力が強すぎるものもありますが、アミノ酸であるアルギニンはほどよくうるおいを残しながら汚れを落とせることが特徴です。

アルギニンといえば、スポーツ飲料に入っているイメージが強い方もいるのではないでしょうか。一酸化窒素を産生して血管を拡張し持久力を向上させる効果があるため、スポーツ飲料によく配合されているのです。このほかにも多くの働きをもつことから、アルギニンはさまざまな方に愛用されるようになりました。

なおアルギニンは、適量であれば短期的に摂取しても安全だと考えられています。妊娠中の摂取についてもとくに問題はなく安全です。ただし、妊娠中や授乳中の方が長期間にわたって使用する場合の安全性についてはまだ分かっていません。[i]

アルギニンの効果・効能は?

アルギニンには、次のような効果や効能があります。

血流を改善する

アルギニンを2型糖尿病の方へ経口で摂取させたところ、収縮期血圧や拡張期血圧を低下させました。これは一酸化窒素の合成を促進することで血管を拡張するためです。糖尿病の患者さんでは、一酸化窒素の合成能力が低下しています。アルギニンによって血管の拡張が確認されたため、軽度高血圧の治療などに有効かもしれません。[1]

免疫機能を高める

アルギニンは免疫機能にも関わっています。免疫細胞の一つであるマクロファージを活性化する働きがあるのです。マクロファージは、白血球の仲間として知られています。体内にウイルスや細菌などの異物が侵入すると、マクロファージがそれらを貪食してほかの免疫細胞を活性化させるため、非常に重要な存在なのです。

このほか、ナチュラルキラー細胞にも影響を及ぼします。乳がんの患者にアルギニンを補給したところ、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性が増強されました。ナチュラルキラー細胞とは、がん細胞やウイルス細胞などを見つけると、すぐに攻撃する細胞のことです。免疫機能が向上することで、ウイルスや細菌に負けづらい体を作れるでしょう。[2]

運動能力を上げる

アルギニンを投与すると、血漿インスリンや成長ホルモン、グルカゴンやカテコールアミン、プロラクチンの量が増加します。また、一酸化窒素が増加することで、運動中における骨格筋代謝を変化させることが明らかです。アルギニンによって運動によるトレーニングの効果が増強するというデータもあります。

ただし、運動中にアルギニンがどのような反応を示しているのかについてはさらなる研究が必要です。アルギニンの摂取によって運動能力が上がり、持久力の向上などが見込める可能性があると考えられるでしょう。[3]

うっ血性心不全の改善

うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まることで血液を十分に全身へ送れなくなり、血液のうっ血が起こっている状態のことです。尿の量が減少して体液量が増加するため、体重増加が見られます。むくみも代表的な症状です。

うっ血性心不全の患者にアルギニンを一日15g経口で摂取させたところ、糸球体濾過率やクレアチニンクリアランスなど、腎臓の機能を示す値が改善しました。

また、うっ血性心不全で通常行われる治療と平行してアルギニンを投与することで、過剰な体液を取り除く働きがあることも分かっています。現時点で治療薬の代わりにアルギニンが使われることはありません。患者の生活の質をどの程度変化させるのかについても分かっていない部分があります。[4]

勃起機能不全を改善する

アルギニンには一酸化窒素の分泌を増やして血管を拡張する働きがあることから、勃起機能不全の改善にも効果があると考えられています。

実際にED患者に1,500~5,000mgのアルギニンを投与するグループ、プラセボを投与するグループ、何も治療しないグループに分けて研究が行われました。この研究では、プラセボや無治療のグループと比べてアルギニンを投与したグループで有意にEDが改善したことが分かっています。[5]

アルギニンを含む食材はどんなのがあるの?

アルギニンを多く含む食材としては、次のものが知られています。[ii]

食材名 100gあたりに含まれるアルギニンの量
ゼラチン(豚) 8,100mg
ほたてがい(貝柱/煮干し) 5,300mg
とびうお(煮干し) 5,000mg
干しえび 4,600mg
凍り豆腐 4,400mg

アルギニンはゼラチンやほたてがいなどに多く含まれている成分です。大豆製品にも多いため、アルギニンによる効能や効果を実感したい方は、これらの食材を積極的に摂るとよいでしょう。

アルギニンをどのくらいとるのがよいの?

アルギニンの摂取目安量について、厚生労働省などによって厳密に決められた数字はありません。現在のところ、一日あたり2,000~4,000mgを摂取すると良いと言われています。アルギニンを多く含む食材だけでも十分に摂取できる量です。

食事からの摂取が難しい場合や、確実にアルギニンを摂取したい場合はサプリメントを活用するのもよいでしょう。

ただし、アルギニンは過剰摂取することで副作用が起こることもあるので注意してください。吐き気や腹痛、膨満感や下痢などの胃腸症状が出やすいことで知られています。サプリメントを使用する場合は、パッケージに記載されている目安量を守って摂取してください。[1]

アルギニンの歴史は?

アルギニンは、1886年にハウチワマメから抽出されました。その後、1980年頃になるとアルギニンによって一酸化窒素が産生されることが解明されます。一酸化窒素には血管を拡張する働きがあるため、心疾患や動脈硬化、頭痛などに効果があるのではと研究が進められました。

現在も脳の発達への関与やポリグルタミン病の治療薬など、さまざまな分野に応用できるのではと研究が行われています。

アルギニンの論文一覧

[1]Oral arginine reduces systemic blood pressure in type 2 diabetes: its potential role in nitric oxide generatioN

[2]Arginine-dependent immune responses

[3]Effects of L-arginine supplementation on exercise metabolism

[4]Effects of oral administration of L-arginine on renal function in patients with heart failure

[5]The Potential Role of Arginine Supplements on Erectile Dysfunction: A Systemic Review and Meta-Analysis

アルギニンの参考文献一覧

[i]健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017

[ii]食品成分データベース 文部科学省

まとめ

アルギニンは、人間が自ら作り出すことのできる非必須アミノ酸の一つです。外から摂取しないと不足する成分ではありませんが、体内での合成能はあまり高くないと言われています。

アルギニンの効果としては、血流改善や免疫機能の向上、うっ血性心不全の改善などが代表的です。勃起機能不全にも効果があるとされており、男性向けのサプリメントも販売されています。

普段の食事で不足することはありませんが、ほたてがいや干しえびなどに多く含まれているので、気になる方はこれらの食材を意識して摂るようにするとよいでしょう。

記事監修者画像

記事の監修岡本妃香里
2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。

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