2024年07月26日 2024年07月26日
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アスタキサンチンという成分を聞いたことがあるでしょうか。健康食品だけでなく化粧品にも配合されることのある、とても有名な成分です。強力な抗酸化作用をもつことから、さまざまな健康や美容効果が期待されています。
しかし、「アスタキサンチンってどのような成分なの?」「具体的にどういった効果が期待できるの?」と疑問に思っている方も多いでしょう。
そこで今回は、アスタキサンチンに期待されている効果を詳しく解説します。アスタキサンチンが多く含まれている食材や1日の摂取目安量も紹介しているので、参考にご覧ください。
アスタキサンチンとは?
アスタキサンチンとは、カロテノイドの一種で赤色の色素をもつ成分のことです。鮮やかな色をもっていることから、天然の色素として用いられることもあります。サケやエビ、甲殻類などに豊富に含まれており、強い抗酸化作用があることが特徴です。このほか、ウズラやフラミンゴ、コウノトリなど鳥類の羽にも多く含まれています。
カロテノイドとは、天然に存在する黄色や赤色などの色素のことです。大きく分けてカロテン類とキサントフィル類の2種類があります。アスタキサンチンは、キサントフィル類に分類されるカロテノイドです。カロテン類には、βカロテンやリコピンなどがあります。どちらも抗酸化作用に優れており、活性酸素の発生を抑えたり取り除いたりする働きをもちます。
カロテノイド=抗酸化作用というイメージが強いかもしれませんが、実はアスタキサンチンは抗炎症作用や免疫刺激作用ももつ成分です。
さまざまな効果が期待されているアスタキサンチンですが、残念ながら妊娠中や授乳中の方の使用に関してはまだ安全性が確立されていません。安全性を考慮し、該当の方は使用しないようにしましょう。
また、ほかの医薬品との相互作用も現時点では分かっていません。使用中の医薬品がある方は、念のためアスタキサンチンを摂取していることを医師や薬剤師に伝えておくと安心です。[i]
アスタキサンチンの効果・効能は?
アスタキサンチンには、次のような効果や効能が期待されています。
未矯正視力が向上
健康なボランティア49名を対象にアスタキサンチンを摂取してもらい、未矯正視力の状態について調査しました。28日間にわたり1日あたり4mgまたは12mgのアスタキサンチンを投与したところ、未矯正視力が有意に改善したという結果が出ています。アスタキサンチンをまったく摂取しなかったグループでは、とくに未矯正視力への影響はありませんでした。[1]
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染予防
ヘリコバクター・ピロリ菌とは、胃の粘膜に生息していることのある細菌です。この細菌が胃にいると、消化性潰瘍や胃潰瘍になりやすいといわれています。アスタキサンチンは、酸化ストレスから細胞を守る強力な抗酸化物質です。
胃上皮AGS細胞をアスタキサンチンで処理し、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染させる試験を行ったところ、ミトコンドリアの機能不全やIL-8の発現、活性酸素種の増加などを抑えることが分かりました。このことから、アスタキサンチンはヘリコバクター・ピロリ菌感染の予防に役立つ可能性があります。[2]
男性不妊症の改善
二重盲検ランダム試験により、2か月以上の不妊症状がある男性30名と、不妊症状のない女性パートナーを対象に1日16mgのアスタキサンチンまたはプラセボを投与する試験を3か月にわたり行いました。この試験では、精液パラメータ、活性酸素種、テストステロン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンなどを評価しています。
アスタキサンチンを投与したグループでは、プラセボ群と比較して精子の速度が増加しました。また、プラセボ群の妊娠率はアスタキサンチンを投与したグループよりも低いという結果が出ています。このことから、アスタキサンチンが生殖能力に影響をもたらす可能性があるといえるでしょう。ただし、より大規模な試験で結果を確認する必要があるといわれています。[3]
更年期症状の軽減
アスタキサンチンとカルシウム、ビタミンD3、リコピン、柑橘類バイオフラボノイドを組み合わせて65人の女性を対象に8週間投与し、更年期症状に対する効果を測定しました。
この結果では、更年期症状でもっとも頻度が高いといわれているほてり、うつ病、不安症、パニック障害、失禁、関節痛が大幅に軽減される可能性が示唆されています。なお、骨粗鬆症への効果については治療期間が短かったため調査されていません。[4]
紫外線から肌を守る
強力な抗酸化作用をもつアスタキサンチンを使用して、紫外線B波によって誘導される炎症性サイトカインの分泌について分析が行われました。紫外線B波を照射した後にヒト角化細胞にアスタキサンチン(8μg)を添加したところ、炎症性サイトカインの分泌が有意に抑えられるという結果が出ています。
炎症性サイトカインとは、炎症反応を促進させる働きがある物質のことです。アスタキサンチンには炎症性サイトカインの産生を抑えることで、紫外線から肌を守る働きがあると期待されています。[5]
肌の保水力や弾力などを改善
30人の健康な女性を対象にアスタキサンチンを1日あたり6mg摂取する試験を8週間行いました。この試験では、アスタキサンチンの摂取と合わせて1日あたり2mlの局所塗布も行っています。試験の結果、皮膚のシワやシミの大きさ、弾力性、肌の質感、角質の水分量の改善が見られました。
このほかに、36人の健康な男性を対象とした6週間にわたる試験も行われています。アスタキサンチン6mgを毎日補給した結果、頬の水分量や皮脂量の改善が見られました。このことから、アスタキサンチンは、肌を健やかに保つ効果があると期待されています。[6]
アスタキサンチンを含む食材はどんなのがあるの?
アスタキサンチンは、以下のような食材に多く含まれています。
• サケ
• マス
• オキアミ
• エビ
• ザリガニ
• イクラ
• カニ
サケはアスタキサンチンを含む海藻を取り込む性質があります。そのため、サケにはアスタキサンチンが多く含まれているのです。エビやカニもアスタキサンチンを多く含みます。赤い部分があるのは、カロテノイドが存在するためです。
アスタキサンチンをどのくらいとるのがよいの?
アスタキサンチンの摂取量や目安量についてはとくに定められていません。食べ物から摂取する量なら安全性に問題はないといわれています。
健康食品やサプリメントから摂取する場合は、1日あたり4~40mgを12週間までに留めるのであれば問題はないようです。アスタキサンチン以外のカロテノイドやビタミン、ミネラルと併用する場合は1日あたり4mgを12か月までに留めれば安全に使用できます。
過剰摂取した場合もとくに健康被害は報告されていません。1日あたり30mgのアスタキサンチンを4週間摂取して過剰摂取安全性試験を行ったところ、理学的検査や眼科検査、問診、血液学的検査、尿検査などで臨床上問題となるような事象は見られませんでした。
アスタキサンチンを効率的に摂るためには、エビやカニなどの食材を積極的に取り入れるとよいでしょう。食事から摂るのが難しい場合は、健康食品やサプリメントなどを活用しても問題ありません。[i]
アスタキサンチンの歴史は?
アスタキサンチンは、1938年にオーストリアの生化学者によって発見された成分です。ロブスターから発見されたこともあり、ロブスターの属名である「Astacus」に由来して名前がつけられています。
抗酸化作用があるため健康にも美容にも良い働きをもつことが期待されているアスタキサンチンですが、そのまま化粧品に配合すると変色したり効果がなくなったりすることが問題でした。そこで開発が進められ、現在は数々の化粧品にも配合されています。
アスタキサンチンの論文一覧
[1]Effect of Astaxanthin on Accommodation and Asthenopia-Efficacy-Identification Study in Healthy Volunteers –[4]MF AfragilR in the treatment of 34 menopause symptoms: a pilot study
[6]Cosmetic benefits of astaxanthin on humans subjects
アスタキサンチンの参考文献一覧
[i]健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017(P23〜24)
まとめ
アスタキサンチンは、赤色の色素をもつカロテノイドの一種です。サケやカニ、イクラやエビなどに多く含まれています。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染予防や男性不妊症の改善、肌の保水力や弾力の改善などに効果が期待されている成分です。
1日の摂取量についてはとくに定められていません。サプリメントや健康食品を利用する場合は、パッケージに記載されている目安量を守って使用しましょう。

- 記事の監修岡本妃香里
- 2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。
Posted by hecola.