2023年12月12日 2024年02月26日
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シトルリンは、「スーパーアミノ酸」とも呼ばれるアミノ酸の一種です。一酸化窒素を生み出す働きがあるため、血管を拡張して血流を良くする効果が期待されています。
血流や動脈硬化の改善を目的としてシトルリンが販売されていることが多いのは、血管拡張作用があるためです。このほか、筋肉増強や疲労回復を目的としてシトルリンを摂ることもあります。このようにシトルリンにはさまざまな働きがあるため、スーパーアミノ酸と呼ばれているのです。
今回は、スーパーアミノ酸であるシトルリンの効果について、論文をもとに紹介します。シトルリンを多く含む食材や一日の目安摂取量などについても紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。
シトルリンとは?
シトルリンはアミノ酸の一種です。アミノ酸はたんぱく質を合成するために必要となります。しかしシトルリンは、たんぱく質の合成には関わっていません。このようなアミノ酸を、遊離アミノ酸と呼びます。GABAやオルニチンなども遊離アミノ酸の一種です。
体内に存在するアミノ酸の量を比べると、遊離アミノ酸の量はそこまで多くありません。しかし、シトルリンはたんぱく質の構成成分となることなく単体で多くの働きを担っています。さまざまな働きがあることから、現在も効果や効能について研究が進められている成分です。
シトルリンが注目されているのは、一酸化窒素を産生する働きがあることが関係しています。一酸化窒素とは、血管を拡張させる成分です。血管が拡張することで血流が良くなり、むくみや冷えの改善などに効果があると期待されています。
またシトルリンは、アンモニアの解毒にも関わっていることで有名です。私たち人間の体では、食べ物を摂取するとたんぱく質からアンモニアが作られるようになっています。
アンモニアは人間にとって有害物質です。体内にアンモニアが蓄積すると、手の震えや幻覚などの症状が出ることがあります。シトルリンは、この有毒なアンモニアを無毒な尿素に変換するサポートを行っているのです。
妊娠中や授乳中の方がシトルリンを使用したときの安全性については、まだ確立されていません。胎児や赤ちゃんへの影響が分からないため、妊娠中や授乳中の方はシトルリンの使用を念のため控えるようにしてください。
シトルリンの効果・効能は?
シトルリンには、主に次のような効果や効能があります。
筋肉を増強する
シトルリンは筋肉のたんぱく質合成を刺激する働きがあります。そのため、筋肉の増強にも役立つでしょう。マウスを使ってシトルリンの効果について調べた研究では、シトルリンがミトコンドリアに働きかけて筋肉のたんぱく質合成を刺激することが分かりました。
また、シトルリンには、成長ホルモンの分泌を促進する働きもあります。成長ホルモンは筋肉を作るために必要なホルモンです。このような働きがあることから、シトルリンは筋肉増強を目指す方のサプリメントやプロテインなどに利用されています。[1]
疲労を回復する
シトルリンには、疲労を回復する効果があることも期待されています。疲労が溜まる原因にはいろいろとありますが、理由の一つとして挙げられるのがアンモニアの蓄積です。体を動かすとアンモニアが体に溜まり、疲労を感じます。
シトルリンは、アンモニアを解毒するために必要な成分です。マウスに負荷をかけて水泳をさせ疲労を溜めた後、シトルリンを補給して疲労が出るまでの時間や乳酸の濃度、アンモニアの濃度などを調べる実験を行いました。
この結果、シトルリンの補給によって疲れ果てるまでの時間が大幅に延長されたのです。このことからシトルリンは、疲労回復だけでなく運動パフォーマンスの向上にも役立つ可能性があると考えられています。[2]
肌のうるおいや健康を保つ
肌のうるおいを守るためには、天然保湿因子(NMF)が必要です。天然保湿因子はアミノ酸で構成されています。シトルリンは天然保湿因子を構成するアミノ酸の一つです。
このほか、グリシンやセリン、アラニンなども天然保湿因子を構成するアミノ酸として知られています。肌のうるおいを守る天然保湿因子を構成するアミノ酸であることから、シトルリンは肌の健康に欠かせない成分だと言えるでしょう。
またシトルリンには、傷の治りを早くする効果もあります。マウスを使った実験では、シトルリンを投与することで皮膚の傷の治癒が促進されました。血流を改善して新陳代謝を促進する効果もあることから、シトルリンは肌の健康促進に重要な成分だと考えられています。[3]
記憶力を向上する
シトルリンには、記憶力を向上させる働きがあるとも言われています。アルツハイマー病モデルのマウスにシトルリンを投与したところ、アルツハイマー病の初期段階における記憶力の改善に効果があることが分かりました。
これは、シトルリンが一酸化窒素を産生することが関与していると考えられています。シトルリンを投与しても、脳組織そのものには変化が見られていません。脳の血流量を増加させることから、集中力を向上させる効果も期待されています。[4]
動脈硬化を予防する
動脈硬化とは、血管の弾力性が低下して血管が詰まりやすくなった状態のことです。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす原因となるため、早めに対処を行う必要があります。
高コレステロール食を与えたウサギにアルギニンとシトルリン、抗酸化物質を投与したところ、動脈硬化の進行を遅らせることができました。これは、シトルリンによって一酸化窒素が増加し、酸化ストレス状態が解消されたためです。
実験はウサギを使って行われましたが、人間の動脈硬化の治療においても有用な効果があるのではと期待がもたれています。[5]
シトルリンを含む食材はどんなのがあるの?
シトルリンは、次の食材に多く含まれています。
食材名 | 100gあたりに含まれるシトルリンの量 |
---|---|
スイカ | 180mg |
ヘチマ | 57mg |
メロン | 50mg |
クコの実 | 34mg |
とうがん | 18mg |
ニガウリ | 16mg |
キュウリ | 9.6mg |
ニンニク | 3.9mg |
シトルリンはもともとスイカの果汁から発見されたということもあり、スイカに多く含まれています。スイカの学名が「Citrullus vulgaris」であることから、シトルリンという名前になりました。スイカのほか、ウリ科の植物に多く含まれていることが特徴です。
ただし、これらの食材だけで十分な量のシトルリンを摂取するのは難しいと言われています。1日に推奨されるシトルリンを上記の食材から摂取しようとすると、スイカなら1/7個、キュウリなら56.5本、ニガウリなら24.2本も必要なのです。
シトルリンをどのくらいとるのがよいの?
シトルリンの摂取量は、厚生労働省などによって厳密には決められていません。文献などでは一日あたり800mgのシトルリンを摂取することが推奨されています。食べ物だけで摂取するのは難しいため、サプリメントを活用したほうが効率的です。
シトルリンを摂取するためにスイカを食べるときは、皮も一緒に食べるようにしましょう。実は、果肉よりも皮の部分にシトルリンが多く含まれているのです。炒めものにすると皮も美味しく食べられます。
過剰摂取した場合の影響については、まだ報告されていません。しかし、摂取目安量を超えて摂ると体調に影響が出る恐れがあります。1日800mgは超えないように摂取してください。サプリメントを使用する場合は、パッケージに記載されている目安量を守って使用しましょう。
シトルリンの歴史は?
シトルリンは1930年にスイカから発見されました。シトルリンという名前もスイカの学名に由来しています。スイカにはさまざまな種類がありますが、とくにカラハリ砂漠に生息するスイカにシトルリンが多いことが特徴です。
過酷な環境で生き残るためにシトルリンが重要な役割をはたしていると考えられています。2007年には、シトルリンが食品成分として利用できるようになり、サプリメントや健康食品などに配合されるようになりました。
シトルリンの論文一覧
[2]Effects of citrulline supplementation on fatigue and exercise performance in mice
[4]Citrulline supplementation improves spatial memory in a murine model for Alzheimer’s disease
まとめ
シトルリンは一酸化窒素を生み出して血管を拡張することから、スーパーアミノ酸と呼ばれています。筋肉の増強や疲労の回復、肌の健康維持や記憶力の向上、動脈硬化の予防などに効果が期待されている成分です。
スイカやメロンなどに多く含まれていますが、食品から1日に必要な量を摂取するのは簡単ではありません。シトルリンは1日800mgの摂取が推奨されています。効率良く摂取したい方はサプリメントの使用を検討してみてください。

- 記事の監修岡本妃香里
- 2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。
Posted by hecola.