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クロセチンとは?

2024年06月20日 2024年06月20日

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クロセチンは鮮やかな黄色の色素をもっているため、古くから食品の色付けに用いられてきました。また、さまざまな健康効果をもつことから、人々の健康を守るためにも活用されています。

クロセチンがもつパワーは世界中で注目されており、多くの研究者がその効果を知るために現在も研究を続けているほどです。今回は、クロセチンがもつ効能効果、クロセチンが多く含まれる食材などについて詳しく解説します。

クロセチンとは?

クロセチンとは、クチナシの果実やサフランなどに含まれている成分のことです。サフランは香辛料や高級ハーブとしても知られています。クチナシは、東アジアに多く分布している植物です。クチナシの果実を乾燥させて抽出したエキスには、多くのクロセチンが含まれています。

日本では、クチナシは山梔子(さんしし)という生薬の一種としても有名です。山梔子は黄連解毒湯(おうれんげどくとう)や加味逍遙散(かみしょうようさん)、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)や茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)などの漢方薬に配合されています。

クロセチンがもつ黄色い色素のもととなるのは、βカロテンやリコピンなどの成分です。クロセチンやβカロテン、リコピンは、どれもカロテノイドという脂溶性の成分に分類されます。

カロテノイドとは、動植物がもつ黄色や赤色の色素のことです。カロテノイドには大きく分けてカロテン類とキサントフィル類があり、βカロテンやリコピンはカロテン類の仲間として知られています。カロテン類は、活性酸素の発生を抑制し、取り除く働きをもっていることが特徴です。

活性酸素は過酸化脂質を作り、動脈硬化や老化などを引き起こす原因となります。カロテン類はこの活性酸素を抑制するため、病気の予防にも効果があるのではと期待されている成分です。[i]

クロセチンの効果・効能は?

クロセチンには、おもに次のような効果や効能が期待されています。

眼精疲労を軽減

クロセチンには、VDT作業による目の疲労を軽減する効果があることが期待されています。VDT作業とは、ディスプレイやキーボードなどを使って行うデータの入力や画像編集などの作業のことです。

目の疲労の自覚症状がある健康な成人を対象に試験を行ったところ、クロセチンを摂取してもらったグループでは目の疲れが大幅に改善しました。4週間にわたるクロセチンの摂取が、VDT作業に伴う眼精疲労を軽減する可能性があります。[1]

近視を抑制

クロセチンは、マウスの近視を抑制することが報告されています。そこで中度近視の6歳から12歳までの69人の方を対象に、クロセチンの近視に対する効果を確認する試験が行われました。プラセボまたはクロセチンを24週間にわたり摂取してもらった結果、クロセチンを摂取したグループでは、近視の進行が有意に減少することが示されました。[2]

アルツハイマー病の予防

クロセチンには、アルツハイマー病の予防効果があることが期待されています。アミロイドβの凝集にクロセチンがどのような影響をもたらすか調べられた研究では、クロセチンがアミロイドβオリゴマーを安定化し、アミロイドβ原繊維への転換を阻害することが分かりました。

アミロイドβとは、脳内で作られるたんぱく質の一種です。認知症の症状があらわれる20年以上前から蓄積が始まると考えられており、脳の萎縮や認知機能の低下と関係しています。クロセチンはアミロイドβの蓄積に関与する可能性があるため、アルツハイマー病の予防に効果があるのではといわれています。[3]

損傷した脳を保護

脳挫傷を起こしたラットにクロセチンを投与し、どのような結果が得られるのかが研究によって調べられました。

クロセチンを投与するグループとクロセチンを投与しないグループに分けて脳挫傷後の影響について調べたところクロセチンを投与したグループで血管内皮増殖因子受容体(VEGFR-2)と血清応答因子(SRF)の発現レベルが高いことが分かっています。

このことから、クロセチンは脳挫傷の初期段階でアポトーシスを阻害し、亜急性段階では血管新生と促進する働きがある可能性があることが分かりました。[4]

網膜障害を抑制

クロセチンが網膜損傷に対してどのような影響をもたらすのかについて岐阜薬科大学で研究が行われました。ストレス経路への影響を調べるために、活性酸素によって誘発される細胞内酸化、小胞体ストレス関連たんぱく質の発現、ミトコンドリア膜電位の破壊、カスパーゼの活性化について調査が行われています。

ツニカマイシンまたは過酸化水素へ暴露することで誘発された細胞損傷に対して、3μMのクロセチンが誘発細胞死を50~60%阻害し、カスパーゼ3およびカスパーゼ9の活性を増加させました。

また、暗順応後に8,000ルクスの白色光に3時間暴露することで網膜光障害を誘発させたマウスにクロセチンを経口投与したところ、光受容体変性や網膜機能不全の阻害作用が確認されています。このことから、クロセチンは、網膜損傷に対する保護効果があると期待されています。[5]

睡眠の質を向上

クロセチンが睡眠に対してどのような効果をもつのかについて、関西福祉科学大学で研究が行われました。軽度の睡眠障害がある健康な成人男性21人を対象に試験が実施されています。クロセチンを摂取するグループとしないグループに分けて二重盲検試験を行ったところ、摂取したグループでは覚醒回数がプラセボグループと比べて減少しました。

主観的データでも、クロセチンの摂取前と比べると睡眠の質が改善している傾向があることが分かっています。なお、クロセチン摂取による副作用は確認されていません。このことから、クロセチンが睡眠の質を向上させるのに貢献している可能性があります。[6]

肉体疲労を軽減

クロセチンが人間の肉体疲労を軽減させる効果があるのかについて、大阪市立大学で研究が行われました。クロセチンおよびアスコルビン酸を含むプラセボで日本人の健康ボランティア14人(男性7人、女性7人)を対象にクロセチンを摂取するグループ、アスコルビン酸を摂取するグループ、プラセボを摂取するグループに分けて試験が行われています。

被験者は、疲労を誘発するために自転車エルゴメーターを用いて計240分の作業付加試験を実施しました。この試験の結果、クロセチンを投与された男性はプラセボを投与された男性と比較して有意に非作業負荷における最大速度の変化が高かったことが分かっています。

アスコルビン酸を投与したグループでは、最大速度に変化は見られませんでした。このことからクロセチンを毎日投与することで男性の肉体疲労を軽減する可能性があることが分かっています。

クロセチンを含む食材はどんなのがあるの?

クロセチンは、クチナシの果実やサフランに多く含まれている成分です。たくあんや栗きんとん、パエリアなどの料理の着色料として使用されることもあります。

クロセチンを摂取したい場合は、クチナシやサフランなどを活用するとよいでしょう。しかし、クチナシやサフランは食用として一般的に手に入りやすいものではありません。

クロセチンをどのくらいとるのがよいの?

クロセチンの摂取量について、推奨されている摂取量はとくに定められていません。ですが、現在販売されているクロセチン含有のサプリメントは、1日あたりの摂取量が7.5mgとなっているものがほとんどです。

また、1日7.5mgの摂取量ではとくに有害事象の報告がないため、この摂取量の安全性は高いと考えられています。健康な成人男性を対象に4週間にわたってクロセチンを1日あたり37.5mg摂取してもらう過剰摂取試験を行いましたが、臨床上問題となるような変化は見られませんでした。

このことから、クロセチンを過剰摂取してしまった場合でも大きな影響はないと考えられます。しかし、未知の副作用などがある可能性もあるため、クロセチンを摂取する場合は目安量を守って使用しましょう。なお、クロセチンを摂取するタイミングについては決まりがありませんので、お好きなタイミングで摂取して構いません。[ii]

クロセチンの歴史は?

クロセチンを多く含有しているクチナシは、古くから漢方薬の原料として用いられてきました。中国最古の薬物書である神農本草経にも収載されています。神農本草経が成立した年代は定かではありませんが、後漢代の1~2世紀頃に編纂されたという説が有力です。日本でも、古くから天然の着色料として愛用されています。

クロセチンの論文一覧

[1]Effects of Crocetin on the Pupillary Response during Accommodation Induced by Visual Display Terminal Work: A Randomized, Double-blind, Placebo-controlled, Crossover Trial

[2]The Effect of Dietary Supplementation of Crocetin for Myopia Control in Children: A Randomized Clinical Trial

[3]Crocetin inhibits beta-amyloid fibrillization and stabilizes beta-amyloid oligomers

[4]The role of crocetin in protection following cerebral contusion and in the enhancement of angiogenesis in rats

[5]Crocetin prevents retinal degeneration induced by oxidative and endoplasmic reticulum stresses via inhibition of caspase activity

[6]Effect of crocetin from Gardenia jasminoides Ellis on sleep: a pilot study

[7]Daily oral administration of crocetin attenuates physical fatigue in human subjects

クロセチンの参考文献一覧

[i]カロテノイド | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[ii]様式Ⅰ:届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)

まとめ

クロセチンは、黄色い色素をもつカロテノイドの一種です。クチナシの果実やサフランなどに多く含まれています。クチナシは山梔子という生薬としても有名で、多くの漢方薬に配合されている植物です。

アルツハイマー病の予防や脳の保護、網膜障害の抑制など、さまざまな効果が期待されています。摂取量について厳密には決まっていませんが、1日あたり7.5mgを目安に摂取するとよいでしょう。

記事監修者画像

記事の監修岡本妃香里
2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。

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