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DHAとは?

2024年02月26日 2024年02月26日

  • 血液・血管

「DHAにはどのような働きがあるの?」
「DHAを多く含む食材が知りたい」

DHAは、脳細胞の活性化に関わると言われている栄養素です。なんとなく「体に良い成分」だと認識している方が多いのではないでしょうか。DHAは体内で合成できないため、外から摂取する必要があります。

しかし、DHAには具体的にどのような効果があるのか、どうすれば効率よく摂取できるのか疑問に思っている方も多いでしょう。

そこで今回は、DHAの効果や多く含まれている食材などについて詳しく解説します。

DHAとは?

DHA(ドコサヘキサエン酸)とは、青魚に多く含まれているオメガ3系(n-3系)不飽和脂肪酸の一種のことです。体内ではEPA(エイコサペンタエン酸)から作られます。DHAが健康食品として注目されるようになったのは、1989年のことです。

魚を食べる習慣がある子どもでは知能指数が高いことが分かりました。このことがきっかけで、DHAは世界中から注目を集めることになったのです。

しかし、DHAは体内で合成することができません。そのため、必須脂肪酸と呼ばれています。DHAは脳や目の網膜、心筋や胎盤などに含まれている大事な成分です。大事な成分であるにもかかわらず体内では合成できないため、日々の食事でしっかりと補っていく必要があります。

DHAは大人だけでなく赤ちゃんにとっても大切な成分のため、乳児用ミルクに添加されていることが少なくありません。DHAを経口摂取することに関しては、ほとんどの方で問題ないとされています。

DHAと似たものにEPA(エイコサペンタエン酸)というものがありますが、こちらは同一のものではないため注意しましょう。どちらも青魚に多く含まれる成分ですが、EPAは脳への働きよりも血液をサラサラにする働きのほうが注目されています。[1]

DHAの効果・効能は?

DHAには、次のような効果があると期待されています。

記憶力を高める

DHAには、アルツハイマー病などの脳障害を阻止することで記憶力を高める働きがあると言われています。神経を保護する働きを強化することで、記憶力の向上に働くのです。また、血液中のDHAの量が減ると、加齢による認知機能の低下を招くことも分かっています。

DHAはシナプス膜の流動性や神経伝達物質の受容体の密度を変化させることで、認知機能を改善するのです。ただし、DHAがどのようにして認知機能に影響を与えるのかについては、さらなる研究が必要だと言われています。[i]

加齢黄斑変性症の予防

加齢黄斑変性症とは、廊下に伴って網膜の中心に出血やむくみが起き、視力が低下する病気のことです。そのまま放置しておくと視力が回復しなくなる恐れもあるため、なるべく早めに治療を開始しなければなりません。

DHAは、加齢黄斑変性症の予防に効果がある可能性があります。ただし、効果に確実性があるかどうかはまだ分かっておらず、さらなる研究が必要だとされています。[1]

中性脂肪を下げる

高コレステロール血症の患者がDHAを一日あたり1%2~1.4g摂取したところ、トリグリセリド(中性脂肪)が低下する可能性があることが分かりました。

トリグリセリドは、体を動かすための重要なエネルギー源となりますが、摂りすぎると体脂肪として蓄積されてしまいます。このことから、DHAは体脂肪の管理にも役立つ可能性があります。[1][2]

血圧を下げる

DHAには、血管を拡張することで血圧を低下させる働きがあります。なぜDHAが血管を拡張するのか、詳しい働きについてはまだ分かっていません。高血圧は日本人にとって最大の生活習慣病のリスク要因であると言われています。

高血圧を完全に予防することで年間10万人以上もの方の命を救えると言われていることから、DHAが私たちの健康管理に大きく影響を与える日が来るかもしれません。[ii][3]

うつ病の症状を改善する

DHAにはうつ病の症状を改善する効果があると言われています。ただし、どのようにしてうつ病に効くのか、そのメカニズムについてはまだ不明です。

現時点では、n-3系脂肪酸には抗炎症作用や免疫調整作用、神経伝達物質の調整作用などがあることから、抗うつ効果を示すのではないかと考えられています。

魚介類を1日に111g食べるグループでは、57g(中央値)食べるグループと比較してうつ病のリスクが低下することも明らかです。[iii][4]

DHAを含む食材はどんなのがあるの?

DHAは、主に魚類に多く含まれています。とくに含有量が多い食材としては、次のものが代表的です。[5]

食材名 100gあたりに含まれるDHAの量
たらのあぶら 6,200mg
あんこう(きも/生) 5,100mg
みなみまぐろ(脂身/生) 4,000mg
くろまぐろ(天然/脂身/生) 3,200mg
やつめうなぎ(干しやつめ) 2,800mg
しろさけ(すじこ) 2,400mg
しめさば 2,300mg
さんま(皮つき/生) 2,200mg
ぶり(成魚/生) 1,700mg
さんま(缶詰/味付け) 1,700mg

上記の表を見てもらうと分かる通り、基本的には魚類に多く含まれています。魚を食べる習慣があまりない方、魚が苦手な方はサプリメントを活用するのもよいでしょう。

また、わずかながらではありますが、豚肉や鶏胸肉、牛肉などにも含まれています。100gあたりの含有量は、それぞれ67mg、16mg、4mgです。魚類と比べるとかなり量が少ないため、意識してDHAを多く摂取したいのなら、魚類を食べるのがもっとも効率的でしょう。

魚を食べる習慣がない方、魚が苦手な方はサプリメントを活用するのも一つの方法です。メーカーによって含有量は異なりますが、一日あたり約100~350mg程度のDHAを簡単に摂取することができます。

DHAをどのくらいとるのがよいの?

DHAの摂取目安量について、とくに決まった量はありません。ただし、厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、DHAのほかにEPAやα‐リノレン酸などを含むn‐3系脂肪酸全体での目安量が定められています。1日あたりの摂取目安量は次のとおりです。[6]

年齢 男性 女性
30~49歳 2.0g 1.6g
50~69歳 2.2g 1.9g
65~74歳 2.2g 2.0g
75歳以上 2.1g 1.8g

DHAだけの摂取目安量ではないため、実際にはもう少し少ない数字となります。ちなみに、耐容上限量については、とくに定められていません。耐容上限量とは、健康被害をもたらすリスクがないと見なされる上限の数値のことです。

ただし、DHAに限らず成分の摂り過ぎはよくありません。バランスの良い食事を心がけ、適度な摂取量を守ることが大切です。

DHAの歴史は?

DHAの研究が始まったのは、グリーンランドに住むイヌイットにおいて動脈硬化や脳梗塞などによる死亡が少ないことが分かったためです。冬の気温が約マイナス60℃にもなるグリーンランドでは、野菜の栽培ができないため、アザラシの肉や魚がよく食べられています。

1972年、ある研究者がイヌイットの血液を調べたところ、デンマーク人よりも血中の脂質やコレステロール、トリグリセリドが少ないことが分かりました。これにより、アザラシや魚に含まれている成分に何か鍵があるのではと推察され、DHAの研究が進められることになります。

その後、さらなる研究が進められ、現在もDHAがもつ効果について研究や開発が続けられています。

DHAの論文一覧

[i]Dietary DHA and health: cognitive function ageing

[ii]Omega-3 polyunsaturated fatty acids and hypertension: a review of vasodilatory mechanisms of docosahexaenoic acid and eicosapentaenoic acid

[iii]EPA is More Effective than DHA to Improve Depression-Like Behavior, Glia Cell Dysfunction and Hippcampal Apoptosis Signaling in a Chronic Stress-Induced Rat Model of Depression

魚介類・n-3不飽和脂肪酸摂取とうつ病との関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト

DHAの参考文献

[1]健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017

[2]中性脂肪 / トリグリセリド | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[3]高血圧 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[4]魚介類・n-3不飽和脂肪酸摂取とうつ病との関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト

[5]食品成分ランキング 文部科学省

[6]日本人の食事摂取基準(2020 年版) 厚生労働省

まとめ

DHAは、青魚に多く含まれている不飽和脂肪酸のことです。体内では作ることができないため、食事から摂取する必要があります。記憶力を高めたり中性脂肪を下げたりなどの効果が期待されており、現在も研究が進められているところです。

DHA単体の摂取目安量についてはとくに決まっておりません。DHAを意識して摂取したいと考えている方は、魚類を積極的に摂ったりサプリメントを活用したりして補うようにするとよいでしょう。

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記事の監修岡本妃香里
2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。

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