2024年03月27日 2024年03月27日
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「EPAにはどのような効果があるの?」
「どのような食材にEPAが多く含まれているの?」
EPAは青魚に多く含まれていることで知られている成分で、健康に良いことで注目されています。健康のためにEPAを摂取したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、どうすれば食材からEPAを摂取できるのか、また具体的にどのような効果があるのか気になっている方もいるかと思います。
そこで今回は、EPAを多く含む食材や期待できる効果について、詳しく見ていきましょう。
EPAとは?
EPAとはエイコサペンタエン酸とも呼ばれる不飽和脂肪酸の一種です。不飽和脂肪酸はさらに一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸にわけられ、多価不飽和脂肪酸はn-6系とn-3系にわけられます。EPAはn-3系の不飽和脂肪酸です。体内でほとんど作ることができないため、必須脂肪酸と呼ばれています。
そのため、EPAは食事から摂取していかなければなりません。ただし、熱に弱く酸化しやすいという弱点があるため、青魚を焼いたものよりも生で食べたほうがEPAを多く摂取できます。
EPAが注目されるようになったのは、魚の摂取量が多い方のほうが血液の状態が良かったり血圧が低かったりしたためです。EPAと似た成分にDHA(ドコサヘキサエン酸)もありますが、こちらはEPAとはまた違った成分として知られています。
DHAは記憶力や生活習慣に関わる成分である一方で、EPAは健康維持に関わる成分です。どちらも健康に良い働きが期待されている成分ですが、具体的な効果は違うので目的に応じて使い分けるようにしましょう。
ただし、EPAは体内で消化されると、DHAにも変換されるという特徴があります。摂取したEPAがすべてDHAに変換されるわけではありませんが、DHAと同じような効果も期待できる可能性があると考えられるでしょう。
EPAの効果・効能は?
EPAの効果としては、次のものが知られています。
中性脂肪を下げる
ラットを使った試験にはなりますが、高純度のEPAを摂取することで中性脂肪が低下することがわかっています。これは、肝臓で作られた中性脂肪が血液中に流れることを防いだり、血液中の中性脂肪が消失するように促したりする働きがあるためです。
肝臓にある中性脂肪を減らす働きもあると言われています。中性脂肪は体を動かすためのエネルギー源となりますが、摂りすぎると体脂肪として蓄積されるため注意が必要です。[1][i]
高血圧の予防
EPAには、高血圧の予防に働く可能性も示唆されています。EPAとDHAの両方を含むn-3系脂肪酸を18歳以上のヒトに投与し、血圧とどのような関連があるのかを調べる研究が行われました。
この研究では、合計2gのEPAとDHAを1日に摂取したグループで血圧との関連性が確認されています。血圧を低下させるために必要なn-3系脂肪酸の量は1日2~3gであることもこの研究でわかりました。[ii][2]
LDLコレステロールを下げる
EPAには、LDLコレステロールを下げる働きもあります。LDLコレステロールは肝臓から全身にコレステロールを運ぶため、悪玉コレステロールとも呼ばれている成分です。LDLコレステロールが増えすぎると血管に溜まって血栓ができ、動脈硬化を進行させる恐れがあります。
総コレステロールが6.5mmol/L以上の患者を18,645名集めてEPAを摂取するグループとスタチン(脂質異常症の治療薬)を摂取するグループとにわけて投与したところ、両グループでLDLコレステロールの低下が見られました。[3]
うつ病の改善
うつ病にEPAが効果を発揮する可能性があることも示唆されています。うつ病への効果を確認するために、EPAとDHAを摂取するグループとプラセボを摂取するグループにわけて試験が行われました。この試験の結果では、EPAとDHAを摂取したグループでうつ病の改善効果があったことがわかっています。
なぜうつ病に効果があるのかについては諸説ありますが、うつ病に関係している神経の炎症を抑えたり、ドーパミンやセロトニン作動性の神経伝達を増加させたりする働きが関係しているのではと考えられています。[4][ii]
気管支喘息の改善
小児気管支喘息をもつ患者29人を対象にEPAを1日84mgおよびDHAを1日36mg含んでいる魚油を10か月にわたって摂取してもらう試験が行われました。この試験では、喘息症状のスコアが改善し、アセチルコリンへの過剰反応の低下も確認されています。
一方で、EPAやDHAを含まない対照グループでは、とくに喘息症状のスコアやアセチルコリンへの反応の低下は見られませんでした。このことから、EPAやDHAには気管支喘息をもつ小児の症状を改善する効果があると考えられます。[4]
EPAを含む食材はどんなのがあるの?
EPAを多く含む食材としては、次のものが代表的です。[iv]
食材 | 100gあたりに含まれているEPAの量 |
---|---|
たらのあぶら | 13,000mg |
くじら(本皮/生) | 4,300mg |
あんこう(きも/生) | 3,000mg |
やつめうなぎ(干しやつめ) | 2,200mg |
しろさけ(すじこ) | 2,100mg |
あゆ(養殖/内蔵/焼き) | 1,800mg |
みなみまぐろ(脂身/生) | 1,600mg |
さば(開き干し) | 1,500mg |
まいわし(みりん干し) | 1,400mg |
さんま(皮なし/生) | 1,400mg |
上記の表を見てもらうとわかる通り、基本的には魚類に多く含まれています。圧倒的にEPAが多く含まれているのは、たらのあぶらです。あぶらだけを摂取するのは難しいかと思いますので、たらを積極的に食べるようにするとよいでしょう。
なお、魚をあまり食べる習慣がない方は、EPAが配合されたサプリメントを摂るのもおすすめです。食生活を大きく変えることなく、手軽にEPAを摂取することができます。
EPAをどのくらいとるのがよいの?
EPAのみをどれくらい摂ればよいのかについては、とくに決まりはありません。厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、EPAやDHAなどを含むn-3系脂肪酸の摂取目安量が発表されています。[v]
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
30~49歳 | 2.0g | 1.6g |
50~69歳 | 2.2g | 1.9g |
65~74歳 | 2.2g | 2.0g |
75歳以上 | 2.1g | 1.8g |
EPA以外も含めたn-3系脂肪酸の摂取目安量ですので、EPAのみで上記の数字をクリアする必要があるというわけではありません。さまざまな健康効果が期待されているEPAですが、摂り過ぎは禁物です。
アメリカでは1日に3.0gの摂取なら問題がないとしています。耐容上限量の設定はされていませんが、3.0gを超えて摂取することのないように気をつけましょう。
EPAの歴史は?
EPAが注目されるようになったのは、1970年代にデンマークで行われたイヌイットの研究がきっかけです。イヌイットはデンマーク人と同程度の比率で脂肪を摂取しているにもかかわらず、心筋梗塞や冠動脈心疾患などの循環器系疾患の罹患率が低いことで注目を集めていました。
なぜ循環器系疾患になりにくいのかを調べた結果、イヌイットが主食としているアザラシや鯨に秘密があることがわかったのです。これらの食材には、EPAが豊富に含まれています。
また、沿岸部に暮らす方と山間部に暮らす方とで血小板の凝集のしやすさが違うことが日本の研究により明らかになりました。現在、EPAは脂質異常症を改善する薬としても承認されています。
EPAの論文一覧
[1]ドコサヘキサエン酸(DHA),エイコサ ペンタエン酸(EPA)の生理機能
EPAの参考文献
[i]中性脂肪 / トリグリセリド | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[ii]健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017
[iii]LDLコレステロール | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[iv]食品成分ランキング 文部科学省
[v]2020年版食事摂取基準
まとめ
EPAは魚類に多く含まれている不飽和脂肪酸の一つです。中性脂肪を下げたり高血圧を予防したりなど、さまざまな効果が期待されています。たらのあぶら、くじら、あんこうなどに多く含まれていることが特徴です。EPAを食材から摂取したい方は、魚類を積極的に摂取するようにしましょう。

- 記事の監修岡本妃香里
- 2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。
Posted by hecola.