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エルゴチオネインとは

2024年03月04日 2024年03月14日

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  • 血液・血管

「エルゴチオネインってどのような成分なの?」
「エルゴチオネインにはどういった効果があるの?」

エルゴチオネインは「記憶の番人」とも呼ばれている成分です。あまり聞き慣れない方も多いかと思いますが、キノコ類に含まれている成分として知られています。

今回は、このエルゴチオネインが具体的にどのような成分なのか、どういった効果があるのかについて詳しく見ていきましょう。エルゴチオネインを含む食材や目安の摂取量についても紹介しているので、こちらも参考にご覧ください。

エルゴチオネインとは?

エルゴチオネインとは、おもにキノコ類に含まれている成分のことです。ほかにL-エルゴやL-エルゴチオネイン、チアジンやチオネインなどの呼び方もあります。

エルゴチオネインは植物由来の水溶性のアミノ酸です。酸化的ストレスから体を守る効果があることで大きく注目されています。皮膚に対しても良い働きをすると言われており、エルゴチオネインを含むスキンケア製品もあるほどです。抗酸化作用だけでなく、光による老化からも肌を守ってくれると言われています。

エルゴチオネインは多くの生物に存在する成分ですが、キノコ類のように自分自身で成分を作り出すことができないものも存在します。なかには、土壌細菌が作り出したエルゴチオネインを吸収して貯蔵しているものもあるのです。

人間もエルゴチオネインを体内で作り出すことはできません。そのため、エルゴチオネインを含む食品から摂取する必要があります。なお、エルゴチオネインの副作用についてはまだ研究段階にあるため、どれほど摂ると影響が出るのかについてはまだわかっていません。

また、妊娠中の方や妊娠の可能性がある方、授乳中の方がエルゴチオネインを摂取することの安全性についても現時点ではデータが不足している状況です。

サプリメントの成分のなかには医薬品と飲み合わせが悪いものもありますが、エルゴチオネインに関しては相互作用がまだ明らかになっていません。サプリメントや健康食品との飲み合わせについてもはっきりとしていないことから、まだ研究段階にある成分だと言えるでしょう。ただし、効果や効能に関してはいくつかの働きが期待されています。[i]

エルゴチオネインの効果・効能は?

エルゴチオネインには、次のような効果・効能が期待されています。

抗酸化作用

エルゴチオネインは、強い抗酸化作用をもつ成分です。活性酸素の働きを抑制し、酸化ストレスによるDNA損傷を防ぎます。活性酸素とは、通常の大気中にある酸素よりも活性化された酸素などのことです。

不安定で反応性が高く、さまざまな物質と反応します。活性酸素が問題視されているのは、DNAを損傷することで老化を促したり病気を引き起こしたりするためです。エルゴチオネインには抗酸化作用があるため、活性酸素の働きを抑制できます。[1][ii]

美肌効果

エルゴチオネインは、美肌にも効果的な成分です。皮膚繊維芽細胞を用いて調べた研究では、コエンザイムQ10と比較してエルゴチオネインのほうが紫外線による活性酸素の発生を抑える効果が高いことがわかりました。活性酸素は皮膚の老化にも関わっていることから、エルゴチオネインには美肌効果があると言えるでしょう。

また、培養繊維芽細胞を用いてエルゴチオネインを投与した試験では、紫外線照射によって起こるTNF-αやMMPの活性化が抑制されたこともわかりました。TNF-αは炎症や免疫に関わる因子、MMPとは細胞外基質を分解する酵素のことです。MMPにはいくつか種類があり、エルゴチオネインはなかでもMMP-1の発現を50%近くも抑制することがわかっています。[2][3]

アルツハイマー病を軽減する

アルツハイマー病モデルのマウスにエルゴチオネインを長期的に摂取したところ、酸化ストレスとアミロイド斑が軽減されることが確認されました。このことから、エルゴチオネインを大量に摂取することで、脳に良い反応があることがわかっています。

アルツハイマー病は、認知症のなかでももっともメジャーな病気です。いまだに進行を遅らせる治療法しかありませんが、エルゴチオネインが新たな治療法を導き出すかもしれません。[4]

心血管疾患のリスクを低下させる

エルゴチオネインは、心臓代謝性疾患のリスク低下に関連する健康志向の食品パターンと強く関連していることがわかっています。エルゴチオネインが増加すると、心臓代謝疾患と死亡率のリスクが低下するのです。

心血管疾患は、日本人の死因の上位に位置しています。心臓につながる血管などに異常が生じることで十分な血液が行き渡らなくなる病気です。エルゴチオネインが心血管疾患の改善に効果を発揮するのではと期待がもたれています。[5]

エルゴチオネインを含む食材はどんなのがあるの?

エルゴチオネインは、キノコ類に多く含まれている食材です。おもに、次の食材に含まれています。

・ササクレヒトヨタケ
・シイタケ
・ヒラタケ

ササクレヒトヨタケは、丸みを帯びた円筒状のかさをもつキノコです。春から秋にかけてよく見られます。日本各地でよく観測されますが、スーパーに食品として並ぶことはあまりありません。

シイタケはスーパーでも並んでいることが多いので、手に取りやすいでしょう。食べる前に日光にあてると、ビタミンDの量が増えるのでおすすめです。エルゴチオネインが含まれているほか、お通じを整える食物繊維やカリウムも豊富に含まれています。3大うま味成分の一つであるグアニル酸も豊富です。

ヒラタケは秋から春にかけて見られます。味も香りもクセがなく、料理に使いやすいことが特徴です。[iii]

エルゴチオネインをどのくらいとるのがよいの?

内閣府の食品安全委員会によると、エルゴチオネインの一日最大摂取量は乳児で2.82mg/kg/日、幼児で3.39mg/kg/日、妊娠中および授乳中の女性を含む成人で1.31mg/kg/日と定められています。動物を使った毒性試験においては、800mg/kg/日まではとくに影響が見られませんでした。

推奨摂取量については、とくに定められていません。過剰摂取についてもとくに情報はありませんが、多く摂っても疾病が治癒するわけではないため、適量を守って摂取することが大切です。[iv]

エルゴチオネインの歴史は?

エルゴチオネインは、1909年に麦角から発見されたアミノ酸の一つです。1911年には化学構造が発見され、さらにその後の1920年にはエルゴチオネインが動物の血液中に存在することが明らかになりました。

エルゴチオネインの論文一覧

[1]The antioxidant action of ergothioneine

[2]A comparison of the relative antioxidant potency of L-ergothioneine and idebenone

[3]L-Ergothioneine scavenges superoxide and singlet oxygen and suppresses TNF-alpha and MMP-1 expression in UV-irradiated human dermal fibroblasts

[4]Longitudinal Consumption of Ergothioneine Reduces Oxidative Stress and Amyloid Plaques and Restores Glucose Metabolism in the 5XFAD Mouse Model of Alzheimer’s Disease

[5]Ergothioneine is associated with reduced mortality and decreased risk of cardiovascular disease

エルゴチオネインの参考文献

[i]健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017

[ii]活性酸素 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[iii]しいたけの効用 – 大分県ホームページ

[iv]食品安全関係情報詳細

まとめ

エルゴチオネインは、キノコ類に多く含まれている成分のことです。抗酸化作用に優れており、DNAの損傷を防いだり病気を予防したりする働きが期待されています。また、活性酸素の発生を抑えることで美肌効果を発揮することも明らかです。

これからの研究が必要な分野ではありますが、アルツハイマー病を軽減したり心血管疾患のリスクを低下させたりする働きがあることも期待されています。エルゴチオネインはササクレヒトヨタケやシイタケ、ヒラタケなどに多く含まれていますので、これらの食品を積極的に摂りましょう。食品から摂るのが難しい場合は、サプリメントや健康食品などを活用してみてください。

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記事の監修岡本妃香里
2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。

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