2024年03月29日 2024年03月29日
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「葉酸にはどのような効果があるの?」
「葉酸を効率よく摂るためにはどの食材を食べればいいの?」
このような疑問をおもちではありませんか?葉酸は私たちにとって身近な栄養素です。しかし、具体的に葉酸がどのような効果をもつのかご存知ない方が多いのではないでしょうか。
葉酸といえば妊婦さんが摂る栄養素というイメージをおもちの方がいるかもしれませんが、実は男女関係なく摂取したい栄養素です。今回は、葉酸がもつ効果や多く含まれている食材などについて詳しく解説します。
葉酸とは?
葉酸とは、水溶性ビタミンの一種です。ビタミンBの仲間として知られています。植物の葉に多く含まれており、「造血のビタミン」とも呼ばれる栄養素です。
葉酸は、ビタミンB12と一緒に赤血球が作られるのを助ける働きがあります。体内に存在する葉酸のうち、約50%は肝臓に存在していることが特徴です。
葉酸といえば、妊娠中に必要な栄養素としても有名でしょう。妊娠中に葉酸が不足すると、赤ちゃんに神経管閉鎖障害が起こる可能性があるのです。神経管閉鎖障害とは、赤ちゃんの脳や脊髄の元となる神経管がうまく閉じないために起こる病気のことを言います。
二分脊椎や無脳症の原因になるため、葉酸はとても大事なものなのです。アメリカでは連邦法の要請によって、1988年以降から葉酸がコールドシリアルや小麦粉、パン、パスタ、クッキーなどに添加されています。
葉酸は、葉酸塩と呼ばれることもある成分です。葉酸塩は食品中に天然の成分として存在します。葉酸は、天然に存在する葉酸塩から合成して作られたものです。つまり、葉酸は、葉酸塩の一つとして存在しています。
妊娠中や授乳中に摂取しても、ほとんどの方で安全です。1日400μg程度の摂取であれば、ほとんどの成人に副作用は起こりません。ただし、高用量の葉酸を摂取すると、口のびらんや気管支喘息、脱毛症、血圧低下などの副作用を来す恐れがあると考えられているため、摂り過ぎには注意してください。[i]
葉酸の効果・効能は?
葉酸には、主に次のような効果や効能があります。
神経管閉鎖障害の予防
妊娠前から十分な葉酸を摂取しておくことで、神経管閉鎖障害の予防に効果があると言われています。葉酸は、細胞増殖に必要なDNAの合成に関与している成分です。
妊娠初期は胎児の細胞増殖がとても盛んであり、この時期に神経管が形成されます。葉酸が不足すると神経管がうまく閉じず神経管閉鎖障害を起こす可能性があるのです。
日本では、神経管閉鎖障害のうち、とくに二分脊椎がよく見られます。日本で二分脊椎が起こる頻度は、2007年から2011年では出生数1万人に対して5.59人です。諸外国を含めて日本でも神経管閉鎖障害のリスクを減らすために葉酸のサプリメントなどを利用して摂取することが推奨されています。[ii]
貧血の予防
葉酸は、赤血球を作るのに必要な栄養素です。葉酸が不足すると、赤血球の元となる赤芽球がうまく作られなくなり、巨赤芽球性貧血を発症することがあります。赤芽球が正常に作られなければ、赤血球も正常には作られません。
巨赤芽球性貧血とは、葉酸やビタミンB12が不足することで起こる貧血のことです。巨赤芽球性貧血になると、動悸や息切れ、疲労感など鉄欠乏性貧血でもよく見られる症状が起こります。赤血球を正常に作るためにも葉酸の摂取が必要です。葉酸を摂ることで巨赤芽球性貧血の予防ができます。[1]
動脈硬化を予防
動脈硬化を引き起こす原因物質の一つとして、ホモシステインが知られています。ホモシステインとは、必須アミノ酸であるメチオニンを代謝する過程で作られる代謝物のことです。血液中のホモシステインが増加すると、動脈硬化のリスクが高まることが分かっています。
南アフリカのプレトリア大学で、高ホモシステイン血症の男性100名を対象にした研究が行われました。高ホモシステインの方に6週間にわたって一日あたり0.65mgの葉酸を摂取してもらったところ、血中ホモシステイン濃度の低下が確認されています。
ホモシステインは動脈硬化を引き起こす要因になることから、葉酸には動脈硬化を予防する効果があると言えます。[1]
メトトレキサートの副作用を軽減
メトトレキサートは関節リウマチの治療に使われる医薬品です。葉酸の代謝を阻害することで核酸やたんぱく質の合成を抑制し、関節の中で炎症を起こしている細胞の数を減らす効果があります。
関節リウマチの炎症を抑え、痛みや腫れを取り除く効果があるのですが、副作用として悪心や嘔吐が起こるケースがあることがデメリットです。メトトレキサートを服用中に葉酸を摂取すると、副作用である悪心や嘔吐を緩和できることが分かっています。[i]
認知症の症状を抑える
認知症とは、日常生活に支障が出るほど認知機能が低下した状態です。一度発症すると完治することはなく、徐々に症状が進行していきます。ドイツやスペインで行われた研究では、葉酸の補給が認知機能の低下リスクを遅らせる効果があることが分かりました。
葉酸を補給したグループとそうでないグループに分けて認知テストを行ったところ、葉酸を補給したグループのほうでより良い結果が出たのです。
葉酸を含む食材はどんなのがあるの?
葉酸を多く含む食材としては、次のものがよく知られています。[iii]
葉酸を多く含む食材 | 100gあたりに含まれている葉酸の量 |
---|---|
あまのり(焼きのり) | 1,900μg |
パセリ(乾燥) | 1,400μg |
抹茶 | 1,200μg |
豚の肝臓 | 810μg |
大豆はいが | 460μg |
ブロッコリー | 450μg |
生うに | 360μg |
枝豆(生) | 320μg |
ドライマンゴー | 260μg |
まいたけ(乾燥) | 220μg |
このほか、菜の花やモロヘイヤ、ほうれん草やアスパラガス、いちごやアボカドなどにも多く含まれています。
葉酸をどのくらいとるのがよいの?
葉酸の一日あたりの推定平均必要量や推奨量は次のとおりです。[iv]
年齢 | 男性(μg/日) | 女性(μg/日) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
推定平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
推定平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
|
0~5か月 | - | - | 40 | - | - | - | 40 | - |
6~11か月 | - | - | 60 | - | - | - | 60 | - |
1~2歳 | 80 | 90 | - | 200 | 90 | 90 | - | 200 |
3~5歳 | 90 | 110 | - | 300 | 90 | 110 | - | 300 |
6~7歳 | 110 | 140 | - | 400 | 110 | 140 | - | 400 |
8~9歳 | 130 | 160 | - | 500 | 130 | 160 | - | 500 |
10~11歳 | 160 | 190 | - | 700 | 160 | 190 | - | 700 |
12~14歳 | 200 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
15~17歳 | 220 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
18~29歳 | 200 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
30~49歳 | 200 | 240 | - | 1,000 | 200 | 240 | - | 1,000 |
50~64歳 | 200 | 240 | - | 1,000 | 200 | 240 | - | 1,000 |
65~74歳 | 200 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
70歳以上 | 200 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
妊婦(付加量) | - | - | - | - | +200 | +240 | - | - |
授乳婦(付加量) | - | - | - | - | +80 | +100 | - | - |
葉酸を過剰摂取すると、口のびらんや腹部疝痛、下痢、睡眠障害、錯乱、悪心、胸焼け、判断力の低下、脱毛症、痙攣、血糖値低下などが見られる恐れがあります。耐容上限量が設けられてはいますが、一日400μg以上を摂取するのは推奨されないとされているため、摂り過ぎには注意しましょう。
葉酸の歴史は?
葉酸はイギリスの研究者によって発見されました。1931年に酵母エキスの中に貧血を予防する物質が入っていることが注目され、当時はサルの貧血を予防する物質として発見されています。
1941年にはほうれん草からも発見され、ラテン語でほうれん草を意味するfoliumから葉酸と名付けられました。葉酸は9番目に発見されたビタミンB群でもあるため、ビタミンB9と呼ばれることもあります。
葉酸の論文一覧
[2]Vitamin requirements for the treatment of hyperhomocysteinemia in humans
Vitamin Supplementation and Dementia: A Systematic Review
葉酸の参考文献一覧
[i]健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017
[ii]葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[iii]食品データベース 文部科学省
まとめ
葉酸は水溶性ビタミンの一種として知られています。神経管閉鎖障害を予防する効果があることから、妊娠を望む方や妊娠中の方は積極的に摂りたい栄養素の一つです。このほか、貧血や動脈硬化を予防したり、認知症の症状を抑えたりする効果も認められています。
食品からも摂取できる成分ですが、手軽に摂取を続けたい方はサプリメントを活用すると便利です。厚生労働省は、妊娠を希望する女性に対して食事からの摂取のほかにサプリメントなどを使って葉酸の補給を行うことを推奨しています。

- 記事の監修岡本妃香里
- 2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。
Posted by hecola.