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鉄とは?

2024年02月22日 2024年02月26日

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「鉄は毎日どれくらい摂ればいいの?」

「鉄を多く含む食材が知りたい」

鉄が不足すると、貧血を起こしてしまうことがあります。とくに女性は月経で血液を失うため貧血になりやすいものです。鉄は、貧血の予防や改善に役立ちます。しかし、どの食材を摂れば鉄を効率良く補えるのか、どれくらい摂取したら良いのか疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、鉄が多く含まれる食材や1日の摂取目安量などについて詳しく解説します。非ヘム鉄とヘム鉄、フェリチン鉄との違いについても説明しているので、こちらも参考にしてみてください。

鉄とは?

鉄とは、人体に必要なミネラルの一種のことです。血液中にはヘモグロビンという赤色素たんぱく質が存在します。ヘモグロビンの「ヘモ」とは鉄(ヘム)のことです。

ヘモグロビンは鉄とたんぱく質が結びつくことでできたものです。ヘモグロビンは肺で酸素と結びつき、全身に運ぶ役割があります。鉄が不足するとヘモグロビンがうまく合成できず、酸素の運搬がうまくいかなくなるため、動悸や息切れなどが起こる貧血になってしまうのです。

通常、成人の体には約3~5gの鉄が存在すると言われています。体内に存在する鉄のうち、70%はヘモグロビンやミオグロビンに存在しています。鉄は私たち人間が生きていくうえで絶対に欠かせないミネラルではありますが、不足しやすいため注意しなければなりません。

ただし、鉄が不足したからといって必ずしも鉄欠乏性貧血の症状が現れるわけではありません。ゆっくりと鉄が失われていった場合、基準値を下回っていても自覚症状がない方もいます。

ところで、鉄には「非ヘム鉄」「ヘム鉄」「フェリチン鉄」と3つの種類があることをご存知でしょうか。非ヘム鉄は、たんぱく質と結合せずに存在している鉄のことです。野菜や牛乳、卵などに多く含まれています。鉄はもともと吸収率があまり高くありませんが、なかでも非ヘム鉄はとくに吸収率が低く、なかなか吸収されません。

一方でヘム鉄は、たんぱく質と結合した状態で存在する鉄のことです。赤身肉や魚などに含まれています。非ヘム鉄よりも吸収率が高いことが特徴です。フェリチン鉄とは、肝臓や脾臓で蓄えられている貯蔵鉄のことを指します。鉄が必要となったときにヘモグロビンへ鉄を供給する役割をもつ鉄です。大きな枠で見ると、フェリチン鉄も非ヘム鉄に分類されます。[i][ii]

鉄の効果・効能は?

鉄には、次のような効果があることが期待されています。

貧血の予防、改善

鉄はヘモグロビンを構成するミネラルの一種であることから、不足すると貧血になります。食材やサプリメントなどから鉄を補給することで、貧血の予防や改善が可能です。鉄を食事だけで完全に補うのは難しいこともあるため、サプリメントを活用しても問題ありません。[iii]

鉄を補うと2週間程度で貧血は改善されていきます。ただし、ヘモグロビンの状態が正常化するまでは6~8週間ほどかかるため、しばらくは継続して鉄を摂取していきましょう。

記憶力の改善

鉄は記憶力とも深い関係があります。幼少期に鉄欠乏症になると、学習障害や記憶障害が起こりやすくなることが研究により明らかです。学習障害や記憶障害は、鉄欠乏症が改善された後も持続することがわかっています。

鉄が学習障害や記憶障害に関係しているのは、鉄が神経細胞の分化や機能を調節する働きがあるためだと考えられています。また、妊娠中に母親が鉄欠乏症になると、生まれてくる赤ちゃんの認識記憶が損なわれることもわかっているため、妊娠中はとくに意識して鉄を摂取したいものです。[1][2]

運動能力の向上

鉄は運動能力の向上にも影響を及ぼします。エネルギー代謝や酸素輸送などに関わっているため、鉄が十分にないと最適な運動パフォーマンスを発揮できないのです。これは、鉄が不足することで体に酸素を行き渡らせられなくなることが関係しています。[3]

また、鉄の不足は筋肉に酸素を供給するミオグロビンの不足も引き起こし、疲労感や筋力低下を招く原因にもなるため要注意です。このことから、十分な量の鉄を摂取することで、運動能力を向上できると考えられます。

うつ病を改善する

鉄欠乏性貧血の方は、うつ病になりやすいこともわかっています。鉄はセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質を合成するのに必要なため、不足すると精神の安定に影響が出てしまうのです。そのため、鉄を補って鉄欠乏性貧血を改善することで、うつ病の症状をやわらげる効果が期待できます。[4]

髪の毛の脱毛を予防する

脱毛と鉄の関係性についてまだ不明確な部分もありますが、女性型脱毛症と男性型脱毛症に鉄が関係している可能性があります。

女性型脱毛症と男性型脱毛症がある患者210名と、健康な方210名を対照に行った研究では、血清フェリチン濃度が正常で健康な女性と比べて女性型脱毛症の方で低くなっていることがわかりました。このことから、鉄を日頃から摂取することは、脱毛の予防につながる可能性があります。[5]

鉄を含む食材はどんなのがあるの?

鉄は次のような食材に多く含まれています。[iv]

食材名 100gあたりに含まれる鉄の量
あおのり(素干し) 77.0mg
ほしひじき(鉄釜/乾) 58.0mg
セージ(粉) 50.0mg
きくらげ(乾) 35.0mg
あわび(塩辛) 34.0mg
ぶた(スモークレバー) 20.0mg
あさり(つくだ煮) 19.0mg
大豆(はいが) 12.0mg
あまのり(焼のり) 11.0mg
レンズ豆(全粒/乾) 9.0mg

鉄は肉類や魚介類、豆類に多く含まれています。吸収率が高いヘム鉄はレバーや魚介類に含まれていますので、これらから摂取するのがおすすめです。一方で非ヘム鉄は、のりや海藻類に多く含まれています。

鉄をどのぐらいとるのがよいの?

鉄の推定平均必要量や推奨量、目安量や耐容上限量(mg/日)は次の通りです。[v]

性別 男性 女性
年齢等 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量 月経なし 月経あり 目安量 耐容上限量
推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量
0〜5(月) 0.5 0.5
6~11(月) 3.5 5.0 3.5 4.5
1〜2(歳) 3.0 4.5 25 3.0 4.5 20
3〜5(歳) 4.0 5.5 25 4.0 5.5 25
6〜7(歳) 5.0 5.5 30 4.5 5.5 30
8〜9(歳) 6.0 7.0 35 6.0 7.5 35
10~11(歳) 7.0 8.5 35 7.0 8.5 10.0 12.0 35
12~14(歳) 8.0 10.0 40 7.0 8.5 10.0 12.0 40
15~17(歳) 8.0 10.0 50 5.5 7.0 8.5 10.5 40
18~29(歳) 6.5 7.5 50 5.5 6.5 8.5 10.5 40
30~49(歳) 6.5 7.5 50 5.5 6.5 9.0 10.5 40
50~64(歳) 6.5 7.5 50 5.5 6.5 9.0 11.0 40
65~74(歳) 6.0 7.5 50 5.0 6.0 40
75以上(歳) 6.0 7.0 50 5.0 6.0 40
妊婦初期(付加量) +2.0 +2.5
妊婦中期・後期(付加量) +8.0 +9.5
授乳婦(付加量) +2.0 +2.5

鉄を効率良く摂取するためには、ビタミンCと合わせて摂るのがおすすめです。ビタミンCは鉄を吸収されやすい形に変えてくれるため、そのまま鉄を摂るよりも効率よく吸収できるようになります。

動物性たんぱく質にも鉄の吸収を助ける働きがあるため、組み合わせて摂るようにするとよいでしょう。なお、緑茶や紅茶、コーヒーは鉄の吸収を悪くすることがありますので注意してください。

鉄の歴史は?

17世紀には、イギリスの内科医が鉄を貧血の治療に使用していました。1747年には、血液中に鉄が存在していることも明らかになっています。その後、1838年にスウェーデンの化学者によって血液中に鉄含有色素があることがわかりました。

紀元前15世紀頃から製鉄の技術は進んでいましたが、貧血の治療に使われるようになったのは、比較的最近のことなのです。

鉄の論文一覧

[1]The Role of Iron in Learning and Memory

[2]Iron deficiency in pregnancy

[3]Iron and the endurance athlete

[4]Association between iron-deficiency anemia and depression: A web-based Japanese investigation

[5]Iron plays a certain role in patterned hair loss

鉄の参考文献

[i]鉄 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[ii]Hb / 血色素量 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[iii]健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017

[iv]食品成分ランキング 文部科学省

[v]日本人の食事摂取基準(2020 年版) 厚生労働省

まとめ

鉄はミネラルの一種で、不足すると貧血を起こすことで知られています。貧血の予防や改善、記憶力の改善などへの効果が期待されている栄養素です。吸収率の高いヘム鉄はレバーや魚介類に多く含まれています。年齢によって鉄の推奨量や目安量が異なるため、自分に合った量を摂取するように心がけましょう。

食事から摂るのが難しい場合は、サプリメントを活用するのもおすすめです。不足しやすい栄養素ですので、日々の生活でしっかり補っていく必要があります。

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記事の監修岡本妃香里
2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。

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