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NMN

2024年03月14日 2024年03月14日

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  • 体力

エイジングケアに効果がある成分として知られているNMNは、世界中で注目の的となっています。若返ることは当然ながら不可能とされてきたなか、NMNにはさまざまな可能性が秘められていることが分かっているのです。

日本でも多くの研究者がNMNに注目し、その働きやメカニズムを明らかにしようとしています。「NMNには具体的にどのような効果があるの?」「NMNを効率良く摂取する方法はある?と気になっている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、NMNがもつ効果について論文を参考にしながら解説します。NMNの摂取方法や推奨されている摂取量なども紹介しているので参考にご覧ください。

NMNとは?

NMNとは、ビタミンB3などに含まれている成分の一つです。正式には「ニコチンアミドモノヌクレオチド」と呼ばれています。何か特別なもののように感じるかもしれませんが、実は私たちの体にもともと存在する成分です。

NMNと関係が深い成分に、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)があります。NAD+にはサーチュイン遺伝子を活性化させる働きがあるのですが、そのまま人間の体に投与してもすぐに消化管で分解されるため吸収されません。

しかし代わりにNMNを投与すると、体の中でNMNがNAD+に変換されサーチュイン遺伝子の活性化などさまざまな働きができるようになります。

サーチュイン遺伝子とは長寿遺伝子とも呼ばれており寿命や老化に関わっている遺伝子のことです。NMNは間接的にサーチュイン遺伝子を活性化することで、老化を遅らせたり体力を向上させたりします。

NMNの人気に火が付いたのは、2020年3月に厚生労働省が公表している非医薬品リストにNMNが掲載されたためです。これまでは未指定だったため、NMNを積極的に使うことができませんでした。しかし、非医薬品リストに掲載されたことでNMN市場が活性化されたのです。

NMNには若返りに関するさまざまな効果が期待されていますが、医薬品として販売することはできません。市場に出回っているのはすべてサプリメントです。サプリメントで効能効果を表記することはできませんが、これまでに行われてきた研究によって多くの可能性が秘められていることが期待されています。

ここで一つ注意したいのは、NMNが万人に効果を示す成分ではないことです。アメリカのワシントン大学に所属する今井眞一郎教授がマウスを使って行った研究では、20~30代に相当するマウスよりも40~50代に相当するマウスのほうがNMNによる変化が見られやすいことが分かりました。

20~30代の方が使用してもまったく効果が出ないわけではありませんが、40~50代の方のほうが変化を実感しやすい可能性があります。[i]

NMNの効果・効能は?

NMNには、次のような効果・効能が期待されています。

若返り効果

マウスを使った実験では、若返り効果も確認されました。高齢マウスのNAD+レベルを向上させると、神経血管機能が回復することが分かっています。マウスにはNMNを投与して実験を行いました。

2週間にわたってNMNを投与したところ、一部の神経血管が若々しいレベルに回復することが明らかになりました。NMNによって神経血管が若返るのは、ミトコンドリアが若返ったり細胞死に関与する遺伝子が誘導されたりすることが要因だと考えられています。[1]

筋肉の機能低下を防ぐ

年を取ると、人間は少しずつ筋肉の機能が低下していき、時には寝たきりになってしまうことがあります。65歳以上の健康な男性を対象に1日あたり250mgのNMNを12週間続けて摂取してもらいました。すると、プラセボを摂取したグループと比べて有意に歩行速度や握力の改善が確認されています。

近年、高齢者で問題となっているのがフレイルです。フレイルとは、年齢とともに筋力や心身が衰えた状態を指します。NMNによって筋肉の機能低下を防ぐことができれば、フレイルの予防にもつながるでしょう。[2]

インスリンの感受性を改善する

インスリンとは、膵臓から分泌される血糖値を下げるためのホルモンです。インスリンがどれだけ標的細胞に対して働いてくれるのかをインスリン感受性と言います。インスリン感受性が低下すると、インスリンが分泌されても血糖値がうまく低下しません。その結果、糖尿病になってしまうことがあるのです。

糖尿病の予備軍である閉経後で肥満気味の女性(BMI25.3~39.1)を対象にNMNを投与する試験を行ったところ、骨格筋におけるインスリン感受性の改善が確認されています。骨格筋のみでしかインスリン感受性の改善が確認されていないため、糖尿病の予防や改善に効果があるかどうかはまだ不明です。

また、なぜNMNによって骨格筋のインスリン感受性が改善したのかについての明確な理由については分かっていません。今後の研究によりNMNの働きが明らかになることが期待されています。[3]

身体能力の低下を防ぐ

年齢を重ねると、身体能力が低下するため日常生活に支障が出てしまう方が少なくありません。日本人の高齢者を対象に250mgのNMNを1日1回、12週間にわたって投与したところ、プラセボを摂取したグループと比べて有意に倦怠感や眠気などの症状が改善されたとの研究結果があります。

倦怠感や眠気が原因で日中に体を動かすことができず、活動量が低下している高齢者は多くいます。このような方をアクティブに活動できるようにすることで、高齢者の健康維持にNMNが役立つ可能性があるでしょう。[4]

卵母細胞の質の低下を防ぐ

NMNには卵母細胞の質の低下を防ぐ効果があることも分かっています。卵母細胞とは、卵子のもととなる細胞のことです。卵母細胞は、加齢によって徐々に質が低下し、妊娠率が下がっていきます。マウスにNMNを含む飲料水を飲ませたところ、卵母細胞の質の上昇が確認されました。卵母細胞の数そのものに変化はありませんでしたが、生殖能力が回復することが認められています。[4]

NMNを含む食材はどんなのがあるの?

NMNは私たちが通常口にしている食材からも簡単に摂取できる成分です。多く含まれている食材としては、次のものが知られています。

• 枝豆

• ブロッコリー

• アボカド

• トマト

しかし、これらの食材から十分な量のNMNを摂取するのは簡単ではありません。これらの食材を100g摂取しても、NMNはわずか2mg程度しか摂れません。そのため、NMNの効果を期待するのなら食材ではなくサプリメントから補うのが効率的です。

NMNをどのくらいとるのがよいの?

NMNの摂取量について、厳密には定められていません。ワシントン大学と慶應義塾大学による研究によると、1日に500mgのNMNを経口で摂取してもとくに問題ないことが分かっています。ただし、一般的には1日あたり150~300mg程度の摂取が目安だと言われています。

摂り過ぎたとしても尿と一緒に排泄されるので大きな問題にはなりません。NMNを摂取する場合はサプリメントを活用することがほとんどかと思います。各製品のパッケージに目安となる量が記載されているので、そちらを守って使用してください。[ii]

NMNの歴史は?

NMNは、ワシントン大学の今井眞一郎教授を中心として研究が進められている成分です。1997年から2001年、今井眞一郎教授は老化や寿命にサーチュインというたんぱく質が関与していることを発見します。

その後、マウスを使ってNMNを投与する実験が行われ、抗老化作用があることが明らかになりました。NMNが主成分のサプリメントは、すでに数多くの企業が販売しています。今後もNMNの研究が進められ、さらなる進展が見られることでしょう。

NMNの論文一覧

[1]Nicotinamide mononucleotide (NMN) supplementation promotes neurovascular rejuvenation in aged mice: transcriptional footprint of SIRT1 activation, mitochondrial protection, anti-inflammatory, and anti-apoptotic effects

[2]Chronic nicotinamide mononucleotide supplementation elevates blood nicotinamide adenine dinucleotide levels and alters muscle function in healthy older men

[3]Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women

[4]Effect of 12-Week Intake of Nicotinamide Mononucleotide on Sleep Quality, Fatigue, and Physical Performance in Older Japanese Adults: A Randomized, Double-Blind Placebo-Controlled Study

NMNの参考文献一覧

[i]老化を遅らせ、元気続く 最新研究が示す抗老化物質 – 日本経済新聞

[i]世界初 抗老化候補物質NMNを、ヒトに安全に投与できることが明らかに

まとめ

NMNは若返り効果などが期待されている成分です。ニコチンアミドモノヌクレオチドとも呼ばれており、すでに数多くのサプリメントが販売されています。

NMNを摂取すると体内でNAD+に変換され、サーチュイン遺伝子を活性化することが特徴です。サーチュイン遺伝子は寿命や老化とか変わっているため、活性化することで抗老化作用などが期待できます。

NMNは枝豆やブロッコリーなどに含まれていますが、一日に必要な量をこれらの食材からのみ摂取するのは現実的ではありません。サプリメントをうまく活用しながらNMNを摂取していくのが効率的です。

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記事の監修岡本妃香里
2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年に退職し、現在は医療ライターとして医薬品や化粧品、健康食品など健康と美に関する正しい情報を発信中。

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